「夜中に足がつる」「些細なことでイライラする」「寝つきが悪い」「牛乳を飲まないと、カルシウムが足りなくなりそうで不安」——そんな方へ。カルシウムは、骨や歯をつくるだけでなく、筋肉を動かし、神経の情報を伝える場面でも働いているミネラルです。そしてカルシウムは、単独ではなく、マグネシウムとのバランスの中で働いています。カルシウムだけを増やしても、マグネシウムが足りなければ、働きのバランスが崩れやすくなります。この記事では、カルシウムの役割、足りないときに出やすいサイン、不足しやすい背景と時期、マグネシウムとのバランス、牛乳・乳製品をめぐる意見、食事とサプリメントの考え方を、分子栄養学の視点でまとめました。栄養素シリーズの第4回です(第1回は「隠れ鉄不足」とフェリチンの話、第2回はマグネシウムの話、第3回は亜鉛の話)。
カルシウムとは
体の中で最も多いミネラルで、成人の体内に約1kgあります。その約99%が骨や歯に、残りが血液や筋肉、神経にあります。マグネシウムとバランスをとりながら働いています。体の中でつくることはできないため、食事やサプリメントから取り入れます。
「カルシウム=骨」だけでは、見えてこないこと
カルシウムというと、「骨や歯のために摂るもの」というイメージが強いかもしれません。もちろん、体内のカルシウムの大半は骨や歯にあります。けれども、残りのわずかなカルシウムが、血液や筋肉、神経の中で、毎日の体の動きを支えています。
夜中に足がつる、気持ちが落ち着かない、眠りが浅い。こうした変化は、「年齢のせいかな」「疲れているのかな」と、そのままにしてしまいがちです。けれども、カルシウムは食事の内容が変わると、届く量が変わりやすい栄養素です。まずは、食卓を振り返るところから始めてみてください。疲れやだるさが長引くときは、「気持ちの問題」ではない可能性もあります。
こんなことはありませんか
- 夜中や明け方に、ふくらはぎがつる
- 些細なことでイライラする、気持ちが張りつめている
- 寝つきが悪い、眠りが浅く夜中に目が覚める
- 牛乳を飲まないと、カルシウムが足りなくなりそうで不安
- 骨の強さが気になってきた
- 小魚や豆腐、青菜を食べる機会が少ない
カルシウムは、体の中で何をしているのか
カルシウムは、骨をつくる材料であると同時に、体のあちこちで「合図を送る」役割を担っています。代表的な働きを3つ挙げます。
骨と歯をつくる
体内のカルシウムの約99%は、骨と歯にあります。骨は、いったん出来上がったら終わりではなく、古い骨が壊され、新しい骨がつくられることを、一生繰り返しています。その材料として、カルシウムが使われ続けています。
筋肉を縮める
筋肉が縮むときの合図として、カルシウムが働きます。縮んだ筋肉をゆるめるのは、マグネシウムの役割です。この2つが、アクセルとブレーキのように働いています。
神経の情報を伝える
神経から神経へ情報を伝えるときにも、カルシウムが関わっています。気持ちの張りつめやすさや、眠りとの関係については、こころの不調と栄養の関係や睡眠と栄養もご覧ください。
このほかにも、血液を固める働きなど、カルシウムが関わる場面は多岐にわたります。
カルシウムが足りないときに出やすいサイン
不足したときの現れ方は人によって違い、複数が重なって出ることもあります。心当たりのあるものが複数あれば、食事にカルシウムを取り入れてみる、ひとつのきっかけになります。
爪・歯の変化 Nails & Teeth
爪が割れやすい、歯の不調が気になる。
よくある場面:爪のお手入れ、歯みがきのとき
骨の強さが気になる Bones
年齢とともに、骨の強さが気になってくる。
よくある場面:更年期以降、運動不足のとき
カルシウムが不足しやすい背景
カルシウムは、「食事から入る量が少ない」「吸収されにくい」「使われる・出ていく量が多い」という、いくつかの方向から不足しやすい栄養素です。
食事から入る量が少ない Intake
小魚、豆腐や厚揚げなどの大豆製品、小松菜などの青菜が食卓に少ないと、届きにくくなります。
吸収を助ける栄養素が足りない Support
腸からの吸収には、ビタミンDや胃酸が関わります。日光を浴びる機会が少ない、胃腸の働きが落ちていると、取り込みにくくなります。
使われる・出ていく Loss
ストレスが続くと消耗しやすいといわれ、お酒を飲む習慣などで、尿からの排出が増えることが知られています。
バランスが崩れやすい Balance
カルシウムだけを多く摂り、マグネシウムが少ないと、働きのバランスが崩れやすくなります。
甘いもの・精製された糖のとりすぎ Sugar
甘いものや精製された糖を多くとると、カルシウムが尿から出ていきやすくなるといわれます。
年齢とともに Age
年齢を重ねると、腸からカルシウムを吸収する力が落ちやすくなります。
ここがポイント
カルシウムは、食事で「摂る量」だけでなく、「吸収できているか」「使われる量・出ていく量はどうか」「マグネシウムなどとのバランスはどうか」まで含めて見ることが大切です。胃腸の状態も吸収に関わるため、胃腸の不調を整える方法もあわせてご参考にしてください。
足りないと、骨から溶け出す|カルシウムパラドックス
食事からのカルシウムが足りなくなると、体は骨からカルシウムを溶かし出して補います。
溶け出したカルシウムは、血液にのって細胞へ運ばれます。このとき、ふだんは閉まっている細胞のカルシウムの通り道が、ホルモンの関係で開いたままになり、細胞の中にカルシウムが流れ込んでしまうことがあります。足りないはずのカルシウムが、細胞の中ではかえって多くなってしまう。これを「カルシウムパラドックス(カルシウムの逆説)」といいます。細胞の中のカルシウムが増えすぎると、細胞の働きに負担がかかると考えられています。
だからこそ、カルシウムは「骨のため」だけでなく、体全体のバランスを保つために、毎日の食事で切らさないことが大切です。
ライフステージによって、必要なカルシウムの量は変わる
骨は一生つくり替えられていますが、時期によって、カルシウムが多く必要になったり、失われやすくなったりします。
成長期の子ども
背が伸び、骨の量が大きく増える時期です。骨の量は20歳ごろに最も多くなるため、この時期に骨の材料として、多くのカルシウムが使われます。
妊娠中・授乳中
赤ちゃんの骨や歯をつくるため、また母乳を通して赤ちゃんへ届けるために、カルシウムが使われます。
更年期以降
女性は、閉経を迎えるころから骨の量が減りやすくなります。骨の強さが気になり始めるのは、このためです。
年齢を重ねてから
腸からカルシウムを吸収する力が落ちやすくなるため、同じ食事でも、体に届く量が少なくなりがちです。
カルシウムとマグネシウムは、バランスで働く
カルシウムは筋肉が縮むときに、マグネシウムは縮んだ筋肉がゆるむときに関わります。前回の記事で紹介した、アクセルとブレーキの関係です。
骨をつくる場面でも、この2つは一緒に働きます。骨の中には、カルシウムだけでなく、マグネシウムも含まれています。どちらか一方に偏ると、働きのバランスが崩れやすくなります。
カルシウムとマグネシウムは、摂取するときの比が、2対1から1対1程度が望ましいといわれています。カルシウムだけを増やすのではなく、マグネシウムとあわせて考えることが大切です。
骨は、カルシウムだけではできていない
骨は、コラーゲン(骨の土台)と、カルシウムなどのミネラルでできています。鉄筋コンクリートにたとえると、コラーゲンが鉄筋、ミネラルがコンクリートにあたります。そのため、カルシウムだけを摂っても、骨の材料がそろうとは限りません。
| 栄養素 | カルシウムとの関係 |
|---|---|
| ビタミンD | 腸でのカルシウムの吸収を助ける |
| ビタミンK | 骨にカルシウムを取り込む働きに関わる |
| マグネシウム | 骨の材料になり、カルシウムと働きのバランスをとる |
| たんぱく質・ビタミンC | 骨の土台になるコラーゲンの材料 |
牛乳・乳製品は、カルシウム源として良いの?悪いの?|賛否が分かれる理由
「カルシウムといえば牛乳」と思っている方は多いでしょう。一方で、牛乳や乳製品については、賛成と反対の意見が分かれています。
「良い」といわれる理由
カルシウムを多く含み、手軽に摂れる食品として、長く勧められてきました。
「悪い」といわれる理由
① 乳糖が分解しにくい(乳糖不耐)
牛乳に含まれる乳糖は、酵素(ラクターゼ)で分解されて吸収されます。この酵素の働きは、年齢とともに弱くなることがあり、飲むとお腹にガスがたまる、ゴロゴロする、下痢をするといった症状が出ることがあります。症状の出方には個人差があります。
② 乳たんぱく質への反応
牛乳のたんぱく質の約8割を占めるカゼインは、食物アレルギーの原因のひとつです。
③ カルシウムとマグネシウムのバランス
カルシウムとマグネシウムは、2対1から1対1程度が望ましいといわれています。牛乳は、カルシウムとリンが多く含まれる一方、マグネシウムの割合は小さい食品です。100gあたり、カルシウムは約110mgに対して、マグネシウムは約10mgです(日本食品標準成分表)。
④ 骨への効果については、意見が分かれている
乳製品を多く摂れば骨が丈夫になる、という意見があります。一方で、乳製品を多く摂っても骨折は減らない、むしろ骨折が増える関連が報告されている、という意見もあります。こうした報告に対して、乳業団体からは反論も出されています。
カルシウムは、乳製品以外にも、さまざまな食品から取り入れられます。次の「食事で取り入れるコツ」で、毎日の食事に取り入れやすい食品をご紹介します。
牛乳・乳製品の項で参考にした情報
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」普通牛乳
- 食品安全委員会 ファクトシート「アレルゲンを含む食品(牛乳)」
- 小児慢性特定疾病情報センター「乳糖不耐症」
- Feskanich D ら「Milk, dietary calcium, and bone fractures in women: a 12-year prospective study」Am J Public Health, 1997
- Bischoff-Ferrari HA ら「Milk intake and risk of hip fracture in men and women: a meta-analysis of prospective cohort studies」J Bone Miner Res, 2011
- Michaëlsson K ら「Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies」BMJ, 2014
食事で取り入れるコツ
カルシウムは、骨ごと食べる小魚や、大豆製品、青菜、ごまなど、日々の食卓にのぼる食品からも取り入れられます。毎日の食事に少しずつ足していくイメージで、取り入れてみてください。
主な食品に含まれるカルシウムの量をまとめました。左の数値は可食部100gあたり、右はふだん食べる量に換算した目安です(数値は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より)。
| 食品 | 100gあたり | 食べる量の目安 |
|---|---|---|
| 干しえび | 7,100mg | 5gで約360mg |
| さくらえび(素干し) | 2,000mg | 5gで約100mg |
| 煮干し | 2,200mg | 5gで約110mg |
| さばの水煮缶 | 260mg | 1/2缶(90g)で約230mg |
| 厚揚げ | 240mg | 1/2枚(70g)で約170mg |
| 木綿豆腐 | 93mg | 1/3丁(100g)で約90mg |
| 小松菜 | 170mg | 1/3束(70g)で約120mg |
| いりごま | 1,200mg | 大さじ1(9g)で約110mg |
| 切り干し大根(乾) | 500mg | 10gで約50mg |
干しえびや煮干し、ごまは、少しの量でもカルシウムがまとまってとれる食品です。汁物やあえ物に少し加えるだけでも、毎日の量を増やせます。
| 食品群 | 食品の例 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 小魚 | しらす・いわし・煮干し・桜えび | 汁物、炒め物、ふりかけ |
| 魚の缶詰 | 骨まで食べられるさば・さけ・いわしの缶詰 | そのまま、煮物 |
| 大豆製品 | 豆腐・厚揚げ・高野豆腐 | 主菜、汁物、煮物 |
| 青菜 | 小松菜・チンゲンサイ | 煮浸し、炒め物、スープ |
| ごま・乾物 | ごま・切り干し大根 | 副菜、料理のトッピング |
丸ごと食べられる小魚や、骨まで食べられる缶詰は、手軽にカルシウムを足せる食品です。食事だけで十分な量を毎日続けるのは、意外と手間がかかります。食事を土台にしながら、届きにくい分はサプリメントで補うこともできます。選ぶときのポイントを「カルシウムのサプリメントの選び方」にまとめました。
おさらい
食事のポイントは、小魚・大豆製品・青菜・ごまを、日々の食事に少しずつ足していくこと。届きにくい分は、サプリメントで補うこともできます。体質や胃腸の状態による個人差が大きいため、「これだけ食べれば大丈夫」という食品はありません。
カルシウムのサプリメントの選び方
食事だけでは届きにくいとき、サプリメントは心強い選択肢です。ただしカルシウムは、「どれくらいの量を、いつ、ほかの栄養素とどう組み合わせて続けるか」によって、体への届き方が変わります。
量とタイミングは、体の状態に合わせる
カルシウムは、一度に多く摂っても吸収しきれないといわれます。食後に取り入れたり、分けて取り入れたりする方法があります。必要な量は、食事内容や吸収力、体の状態によって人それぞれです。
カルシウムだけでなく、あわせて考える
先ほど整理したとおり、カルシウムは、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウム、たんぱく質などと関わり合いながら働きます。カルシウムだけを増やすのではなく、全体のバランスで考えることが大切です。そのため、自己判断で選ぶより、今の食事や体の状態を確認したうえで決めることをおすすめします。
カルシウムだけのサプリメントは選ばない
カルシウムのサプリメントをとった人ととらなかった人を比べた研究をまとめて解析したところ、カルシウムのみを配合したサプリメントをとったグループで、心筋梗塞が約3割多かったと報告されています。カルシウムは、心臓を動かすときや、神経が情報を伝えるときのスイッチとしても使われるミネラルです。サプリメントを選ぶときは、カルシウムだけのものではなく、マグネシウムもあわせて配合されたものをおすすめします。
サプリメントに迷ったら
健康相談NOZOMIでは、品質と安全性に配慮したサプリメントを取り扱っています。「カルシウムが足りていないかも」と感じたときは、今の食事や体調をお聞かせください。その方に合った種類や量、組み合わせまで、ご提案します。
よくある質問
カルシウムが多い食品は何ですか?
しらす、いわし、煮干し、桜えびなど丸ごと食べられる小魚、骨まで食べられる魚の缶詰、豆腐・厚揚げ・高野豆腐などの大豆製品、小松菜やチンゲンサイなどの青菜、ごま、切り干し大根などです。毎日の食事で、少しずつ組み合わせて取り入れてみてください。
カルシウムは、食事だけで足りますか?
小魚、大豆製品、青菜などを意識すると、摂取量を増やすことはできます。ただ、十分な量を毎日続けるには手間がかかり、届きにくいと感じる方も少なくありません。食事を土台にしながら、足りない分をサプリメントで補うこともできます。必要な量は人によって違うため、状態を確認したうえで選ぶことをおすすめします。
カルシウムのサプリメントは、どう選んで、いつ飲むのがいいですか?
カルシウムだけのものではなく、マグネシウムもあわせて配合されたものをおすすめします。カルシウムのみを配合したサプリメントをとったグループで、心筋梗塞が多かったという研究があるためです。飲むときは食後に、一度に多くとるより、分けてとると吸収されやすくなります。
まとめ|骨だけでなく、体の動きを支えるカルシウムを見直す
この記事のポイント
- カルシウムは、骨や歯をつくるだけでなく、筋肉を動かし、神経の情報を伝える場面でも働くミネラルです。
- 足りなくなると骨から溶け出し、細胞の中にかえって入りすぎる「カルシウムパラドックス」が起こることがあります。
- 成長期、妊娠中・授乳中、更年期以降、年齢を重ねてからは、とくに意識したい時期です。
- マグネシウムとのバランスや、ビタミンD・Kなどとの関わりも大切で、カルシウムだけを増やす考え方ではありません。
- 牛乳や乳製品については意見が分かれています。小魚・大豆製品・青菜・ごまなど、さまざまな食品から取り入れられます。
- 食事を土台に、届きにくい分はサプリメントで補うこともできます。量・タイミング・組み合わせは、体の状態に合わせて選びます。
夜中の足のつりや、落ち着かない感じを「よくあること」で片づけず、まずは食卓を見直すところから始めてみてください。
参考にした情報



