「食べ物の味が、前より薄く感じる」「肌荒れがなかなか落ち着かない」「抜け毛が増えた気がする」「風邪をひくと長引く」——そんな方へ。亜鉛は、300種類以上の酵素の働きに関わり、たんぱく質や細胞をつくる場面を支えているミネラルです。この記事では、亜鉛の役割、足りないときに出やすいサイン、不足しやすい背景と時期、食事での取り入れ方、サプリメントの選び方を、分子栄養学の視点でまとめました。栄養素シリーズの第3回です(第1回は「隠れ鉄不足」とフェリチンの話、第2回はマグネシウムの話)。
亜鉛とは
成人の体内に約2gあり、筋肉や骨、皮膚、肝臓など、さまざまな場所に存在するミネラルです。300種類以上の酵素の働きに関わり、たんぱく質の合成、細胞の入れ替わり、免疫の働きを支えています。体の中でつくることはできないため、食事やサプリメントから取り入れます。
味が薄い、肌が荒れる、髪にコシがない。その変化、見過ごしていませんか
料理の味が薄く感じる、口内炎が繰り返しできる、肌のトラブルが長引く、髪にコシがなくなった。こうした変化が重なると、「年齢のせいかな」「忙しいからかな」と、自分の中で片づけてしまいがちです。
亜鉛の難しいところは、不足しても、すぐに大きな不調として現れにくい点です。けれども、亜鉛が使われる場所は、味を感じる細胞、皮膚、髪、粘膜など、体の中でも入れ替わりの早いところに集まっています。だからこそ、味や肌、髪といった「変化に気づきやすい場所」が、最初のサインになることがあります。疲れやだるさが長引くときは、「気持ちの問題」ではない可能性もあります。
こんなことはありませんか
- 食べ物の味が薄く感じる、味の感じ方が変わった
- 肌荒れが続く、傷やニキビ跡が治りにくい
- 抜け毛が増えた、爪が割れやすい
- 風邪をひきやすく、治るまでに時間がかかる
- 食欲がわかず、疲れやすい
- 肉や魚介類を食べる機会が少ない
亜鉛は、体の中で何をしているのか
亜鉛は、「体をつくって入れ替える」工程のあちこちで、欠かせない役割を担っています。代表的な働きを挙げます。
たんぱく質や細胞の材料をつくる
私たちの体は、たんぱく質でできています。そのたんぱく質を合成したり、細胞が分裂して増えたりするときに、亜鉛を含む酵素が働きます。亜鉛が足りなくなると、体をつくって整える流れが滞りやすくなります。
入れ替わりの早い場所を支える
味を感じる細胞(味蕾)、皮膚、髪、爪、腸の粘膜は、新しい細胞へ入れ替わるスピードが速い場所です。入れ替わりのたびに亜鉛が使われるため、不足の影響が出やすいといわれます。味の感じ方や肌、髪の変化が、サインになりやすい理由です。
免疫の働きを支える
体を守る免疫の細胞をつくり、働かせるときにも、亜鉛は関わっています。風邪をひきやすい、治りにくいと感じるときは、食事の内容を見直すきっかけになります。腸の状態も関係するため、胃腸の不調を整える方法もあわせてご覧ください。
体をサビ(酸化)から守る
呼吸や代謝の過程で生まれる活性酸素は、増えすぎると細胞を傷つけます。亜鉛は、活性酸素を抑える酵素の材料になり、体を「サビ」から守る働きにも関わっています。
消化と食欲を支える
胃酸をつくるときに働く酵素や、唾液に含まれるたんぱく質は、亜鉛を含んでいます。亜鉛は、食べたものを消化する流れにも関わっています。
血糖とホルモンの働きに関わる
血糖を下げるインスリンは、膵臓で亜鉛と結びついた形でたくわえられます。また、精子をつくる働きや、男性ホルモン(テストステロン)をつくる働きなど、性ホルモンの働きにも関わっています。
銅とのバランスをとる
亜鉛と銅は、腸から吸収されるときに互いに影響し合い、体の中でバランスをとり合うミネラルです。亜鉛が足りないと、銅の割合が多くなります。銅は、やる気に関わるドーパミンを、緊張や不安に関わるノルアドレナリンに変える酵素に使われるため、分子栄養学では、亜鉛に比べて銅が多い状態が続くと、イライラしやすい、不安を感じやすいといった形で気持ちに現れやすいと考えられています。
このほかにも、エネルギーの代謝や、神経の働きに関わる酵素を助けるなど、亜鉛が関わる場面は多岐にわたります。
亜鉛が足りないときに出やすいサイン
不足したときの現れ方は人によって違い、複数が重なって出ることもあります。心当たりのあるものが複数あれば、食事に亜鉛を取り入れてみる、ひとつのきっかけになります。
味の感じにくさ Taste
料理の味が薄く感じる、味の感じ方が以前と変わった。
よくある場面:毎日の食事のとき
傷の治りが遅い Healing
小さな傷やニキビ跡が、なかなか治らない。
よくある場面:手荒れ・ささくれのあと
口内炎・口の中のトラブル Mouth
口内炎が繰り返しできる、口の端が切れやすい。
よくある場面:疲れがたまったとき
抜け毛・爪の変化 Hair & Nails
髪のコシがなくなった、抜け毛が増えた、爪が割れやすい。
よくある場面:シャンプー時、爪のお手入れ
風邪をひきやすい Immunity
季節の変わり目に体調を崩しやすい、治るまでに時間がかかる。
よくある場面:季節の変わり目
亜鉛が不足しやすい背景
亜鉛は、「食事から入る量が少ない」「吸収されにくい」「使われる・出ていく量が多い」という、いくつかの方向から不足しやすい栄養素です。
食事から入る量が少ない Intake
牡蠣などの貝類、赤身の肉、卵といった食品が少なく、精製された穀類や菓子が中心の食事や、菜食中心の食事では、亜鉛が届きにくくなります。
加工食品が多い Processed
加工食品に使われる一部の添加物は、亜鉛の吸収を妨げるといわれます。外食やインスタント食品が中心だと、取り込みにくくなります。
使われる・出ていく Loss
ストレスが続くと消耗しやすく、汗を多くかく、お酒を飲む習慣があるなどで、排出も増えることが知られています。
吸収されにくい Absorption
亜鉛の吸収には、胃酸や腸の状態が関わります。胃腸の働きが落ちていると、食べても取り込みにくくなります。
ダイエット・食事制限 Diet
食事の量を減らしたり、肉や魚を控えたりすると、亜鉛も一緒に減ってしまいます。
年齢とともに Age
年齢を重ねると、食が細くなったり、腸から吸収する力が落ちたりして、不足しやすくなるといわれます。
ここがポイント
亜鉛は、食事で「摂る量」だけでなく、「吸収できているか」「使われる量・出ていく量はどうか」まで含めて見ることが大切です。
ライフステージによって、必要な亜鉛の量は変わる
亜鉛は、体をつくって入れ替える場面で使われるため、体が大きく変化する時期や、消耗が多い時期に不足しやすくなります。
成長期の子ども
体が大きくなる時期は、細胞が盛んに増えるため、多くの亜鉛が使われます。食が細い子や、好き嫌いが多く肉や魚をあまり食べない子は、とくに気をつけたい時期です。10歳未満の健康な日本の子ども187人の血液を調べた2026年の研究では、約7割(74.3%)に亜鉛が少ない状態が見られ、見た目には元気な子どもにも「隠れ亜鉛不足」が広がっている可能性が示されています。
妊娠中・授乳中
お母さん自身の体に加えて、赤ちゃんの体をつくるためにも亜鉛が使われます。授乳中は、母乳を通して赤ちゃんへ届ける分も必要になります。
運動をしている方
汗からも亜鉛は失われます。運動量が多い方や、体を使う仕事をしている方は、そのぶん不足しやすくなります。
年齢を重ねてから
食べる量が減ったり、吸収する力が落ちたりするため、不足しやすくなります。味の感じ方の変化が、気づくきっかけになることもあります。
食事で取り入れるコツ
亜鉛は、貝類や赤身の肉など、動物性の食品に多く含まれています。なかでも牡蠣は、亜鉛が特に多い食品として知られています。動物性食品の亜鉛は、植物性のものより吸収されやすいといわれます。毎日の食事に少しずつ足していくイメージで取り入れてみてください。
主な食品に含まれる亜鉛の量をまとめました。左の数値は可食部100gあたり、右はふだん食べる量に換算した目安です(数値は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より)。
| 食品 | 100gあたり | 食べる量の目安 |
|---|---|---|
| 牡蠣(養殖・生) | 14.0mg | 3個(45g)で約6.3mg |
| 豚レバー | 6.9mg | 50gで約3.5mg |
| 牛もも肉・赤身(和牛) | 4.5mg | 100gで約4.5mg |
| 豚かたロース・赤身 | 3.2mg | 100gで約3.2mg |
| うなぎのかば焼き | 2.7mg | 1串(100g)で約2.7mg |
| 鶏もも肉(皮つき) | 1.6mg | 100gで約1.6mg |
| 糸引き納豆 | 1.9mg | 1パック(40g)で約0.8mg |
| いりごま | 5.9mg | 大さじ1(9g)で約0.5mg |
| アーモンド | 3.6mg | 10粒(14g)で約0.5mg |
牡蠣は、少しの量でも亜鉛がまとまってとれる食品です。
| 食品群 | 食品の例 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 貝類 | 牡蠣・あさり | 蒸し物、汁物、鍋 |
| 赤身の肉 | 牛や豚の赤身、レバー | 焼き物、煮込み |
| 卵 | 鶏卵 | 朝食、主菜のもう一品 |
| 種実類 | ごま・アーモンド | 間食、料理のトッピング |
| 大豆製品 | 高野豆腐 | 煮物、汁物 |
主菜に赤身の肉や魚介を置き、卵や種実を足すだけでも、亜鉛の入り口は増えます。ただし、肉が食べにくい方やお腹が弱い方もいます。個人差があるため、体の状態に合わせて取り入れ方を選ぶことが大切です。食事だけで十分な量を毎日続けるのは、意外と手間がかかります。食事を土台にしながら、届きにくい分はサプリメントで補うこともできます。選ぶときのポイントを「亜鉛のサプリメントの選び方」にまとめました。
おさらい
食事のポイントは、貝類・赤身の肉・卵・種実を、主菜や間食に少しずつ足していくこと。届きにくい分は、サプリメントで補うこともできます。体質や胃腸の状態による個人差が大きいため、「これだけ食べれば大丈夫」という食品はありません。
亜鉛のサプリメントの選び方
食事だけでは届きにくいとき、サプリメントは心強い選択肢です。ただし亜鉛は、「どれくらいの量を、いつ、ほかの栄養素とどう組み合わせて続けるか」によって、体への届き方も、お腹の感じ方も変わります。
① 量と飲むタイミングは、体の状態に合わせる
亜鉛は、空腹のときに飲むと、胃のむかつきや吐き気を感じる方がいます。食後に取り入れると、体になじみやすくなります。また、多く摂れば摂るほどよい、というものではありません。必要な量は、食事内容や吸収力、体の状態によって人それぞれです。
② 亜鉛とあわせて意識したい栄養素
亜鉛は、単独で働くのではなく、ほかの栄養素と関わり合いながら働きます。組み合わせを意識することで、より無理なく続けやすくなります。
| 栄養素 | 亜鉛との関係 |
|---|---|
| たんぱく質 | 亜鉛は、たんぱく質と結びついて体の中を運ばれる |
| ビタミンA | 亜鉛は、ビタミンAを体の中で運ぶたんぱく質の合成や、暗いところで目が慣れる働きに関わる |
| ビタミンB6・鉄 | 赤血球の材料になる「ヘム」をつくる流れで、ビタミンB6・亜鉛・鉄がそれぞれの段階を担う |
| ビタミンC | 亜鉛とともに、肌や骨の土台になるコラーゲンづくりに関わる |
| 銅 | 吸収されるときに互いに影響し合う。亜鉛が足りないと、銅の割合が多くなる |
このように、亜鉛は「どれくらいの量を、何と組み合わせるか」で、体への届き方が変わる栄養素です。そのため、自己判断で選ぶより、今の食事や体の状態を確認したうえで決めることをおすすめします。
サプリメントに迷ったら
健康相談NOZOMIでは、品質と安全性に配慮したサプリメントを取り扱っています。「亜鉛が足りていないかも」と感じたときは、今の食事や体調をお聞かせください。その方に合った種類や量、組み合わせまで、ご提案します。
よくある質問
亜鉛が多い食品は何ですか?
牡蠣をはじめとする貝類、牛や豚の赤身、レバー、卵、ごま、アーモンド、高野豆腐などです。なかでも牡蠣は、亜鉛が特に多い食品として知られています。毎日の食事で、少しずつ組み合わせて取り入れてみてください。
亜鉛は、食事だけで足りますか?
貝類、赤身の肉、卵、種実を意識すると、摂取量を増やすことはできます。ただ、十分な量を毎日続けるには手間がかかり、届きにくいと感じる方も少なくありません。食事を土台にしながら、足りない分をサプリメントで補うこともできます。必要な量は人によって違うため、状態を確認したうえで選ぶことをおすすめします。
亜鉛のサプリメントは、いつ飲むのがいいですか?
空腹時は、胃のむかつきを感じる方がいるため、食後に取り入れる方法があります。飲むタイミングや量は、体の状態によって変わります。
妊娠中や授乳中は、亜鉛の必要量が増えますか?
妊娠中や授乳中は、必要量がさらに増えるといわれます。実際の必要量は、食事内容や生活、ストレスの多さなどによっても人それぞれです。
まとめ|味・肌・髪の変化から、亜鉛を見直す
この記事のポイント
- 亜鉛は、たんぱく質や細胞をつくり、味・皮膚・髪など入れ替わりの早い場所を支えるミネラルです。
- 味の感じ方、肌荒れ、口内炎、抜け毛、風邪のひきやすさなどのサインが重なるときは、食事の内容を見直すきっかけになります。
- 成長期、妊娠中・授乳中、運動をしている方、年齢を重ねてからは、とくに不足しやすい時期です。
- 食事を土台に、届きにくい分はサプリメントで補うこともできます。量・タイミング・ほかの栄養素との組み合わせは、体の状態に合わせて選びます。
味の感じ方や肌の調子といった小さな変化を「よくあること」で片づけず、まずは食卓を見直すところから始めてみてください。
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