たんぱく質というと、筋肉をつくる栄養素というイメージが強いかもしれません。実際には、肌や髪、内臓、骨の材料になるだけでなく、食べ物を消化する酵素や体の調子を整えるホルモン、体を守る抗体、気分や眠りに関わる物質の材料にもなっています。たんぱく質は、体のさまざまな働きを、材料の面から支えている栄養素です。その分、足りなくなると、疲れやすさや肌・髪の変化、風邪のひきやすさなど、体のいろいろなところにサインが出てきます。食事の量は足りていても、中身を見てみるとたんぱく質が少なかった、ということは珍しくありません。この記事では、たんぱく質をつくるアミノ酸の種類、体の中での働き、足りないときに出やすいサイン、不足しやすい背景、体重から考える1日の目安、食事での取り入れ方、サプリメントの選び方を、分子栄養学の視点でまとめました。栄養素シリーズの第11回です(第1回は「隠れ鉄不足」とフェリチンの話、第2回はマグネシウムの話、第3回は亜鉛の話、第4回はカルシウムの話、第5回はビタミンAの話、第6回はビタミンB群の話、第7回はビタミンCの話、第8回はビタミンDの話、第9回はビタミンEの話、第10回はビタミンKの話)。
たんぱく質とは
肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれる栄養素です。約20種類のアミノ酸がたくさんつながってできていて、体の中でいったんアミノ酸に分解され、筋肉や肌、髪、内臓、酵素、ホルモンなどの材料として組み立て直されます。アミノ酸のうち9種類は体の中でつくれない「必須アミノ酸」で、食事からとる必要があります。
しっかり食べているのに、疲れやすい理由
朝はパンだけ、昼は麺類だけ、夜はごはんにおかずを少し。量としては食べていても、中身を並べてみると、主食が中心で、たんぱく質のおかずが少ない食事になっていることがあります。
体は毎日、食事からとったたんぱく質を材料にして、筋肉や肌、血液などをつくり直しています。入ってくる量が足りない日が続くと、その材料が不足しがちになります。
こんなことはありませんか
- 朝食がパンやおにぎりだけで終わることが多い
- 肉・魚・卵・大豆製品のおかずが、1日1回くらいしかない
- 疲れやすく、夕方には力が残っていない
- 肌の乾燥や、髪・爪の弱さが気になる
- 風邪をひきやすい
- 食が細く、一度にたくさん食べられない
- ダイエットのために、食事の量を減らしている
たんぱく質をつくる20種類のアミノ酸
私たちの体のたんぱく質は、約20種類のアミノ酸の組み合わせでできています。そのうち9種類は、体の中でつくることができないため、食事からとる必要がある「必須アミノ酸」です。残りの11種類は、ほかのアミノ酸などから体の中でつくることができる「非必須アミノ酸」です。
| 種類 | アミノ酸 |
|---|---|
| 必須アミノ酸 (9種類) | ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン(リジン)、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン |
| 非必須アミノ酸 (11種類) | アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシン |
「非必須」といっても、とらなくてよいという意味ではありません。体の中でつくる量だけでは足りない場面もあり、どのアミノ酸も体にとって欠かせない材料です。それぞれのアミノ酸の働きは、別の記事であらためて紹介します。
たんぱく質は、体の中で何をしているのか
たんぱく質の働きはとても幅広く、大きく5つに分けて見るとわかりやすくなります。最後に、食べたたんぱく質が体で使われるまでの流れも見ておきましょう。
体をつくる材料になる
筋肉、肌、髪、爪、内臓、血管。体の多くの部分は、たんぱく質を材料にしてできています。骨も、カルシウムだけでできているわけではありません。コラーゲンというたんぱく質が骨の枠組みになり、そこにカルシウムなどのミネラルが沈着しています。
体の働きを動かす材料になる
食べ物を消化する酵素、体の調子を整えるホルモン、体を守る抗体。これらも、たんぱく質からつくられています。たんぱく質が足りないと、消化を担う酵素まで不足しやすくなります。
酸素や栄養を運ぶ
血液の中で酸素を運ぶヘモグロビンは、鉄とたんぱく質が組み合わさってできています。栄養素を全身に運ぶ役割にも、たんぱく質が関わっています。
心の働きに関わる物質の材料になる
気分や意欲に関わるセロトニンやドーパミン、眠りに関わるメラトニンなどは、食事からとったアミノ酸を材料に、体の中でつくられます。詳しくはこころの不調と栄養の話や、睡眠と栄養の話でまとめています。
エネルギーにもなる
たんぱく質は、1gあたり4kcalのエネルギー源にもなります。ただ、体を動かすエネルギーの主な担い手は、糖質と脂質です。食事の量そのものが少ないと、体はエネルギーを確保するために、たんぱく質まで燃料として使うようになります。その分、体をつくる材料に回る量が減ってしまいます。糖質の働きや血糖値の波については、糖質と血糖値の波の話でまとめています。
食べたたんぱく質が、体で使われるまで
食べたたんぱく質は、口でよく噛んで細かくされたあと、胃で胃酸と消化酵素によって分解が始まります。さらに小腸で、アミノ酸や、アミノ酸が2〜3個つながった小さな形まで分解されてから吸収されます。吸収されたアミノ酸は血液にのって全身に運ばれ、それぞれの場所で必要なたんぱく質に組み立て直されます。
この流れのどこかがうまく働かないと、食べた量のわりに、体に届く量が少なくなります。たんぱく質は「何を食べたか」だけでなく、「消化・吸収できているか」まで含めて考えることが大切です。
たんぱく質が足りないときに出やすいサイン
サインの出方には個人差があり、当てはまるものがあっても、たんぱく質不足とは限りません。いくつか重なるときは、毎日の食事の中身を振り返る目安にしてください。
疲れやすい Fatigue
少し動いただけで疲れる。夕方には力が残っていない。
筋肉・筋力の低下 Muscle
階段がきつくなった、物を持つ力が弱くなったなど、筋肉が落ちてきたと感じる。
肌・髪・爪の変化 Skin & Hair
肌の乾燥やハリのなさ、髪のパサつき、爪の割れやすさが気になる。
むくみやすい Swelling
足や顔がむくみやすい。血液中のアルブミンというたんぱく質が、水分を血管の中に保つ働きをしています。
風邪をひきやすい Immunity
風邪をひきやすく、治るまでに時間がかかる。
集中が続かない Focus
勉強や仕事に集中しようとしても、長く続かない。
たんぱく質が不足しやすい背景
たんぱく質は、「食事から入る量」が少ないときだけでなく、「体が使う量」が増えたときや、「消化・吸収する力」が落ちているときにも足りなくなります。
主食中心の食事 Carbs
パンや麺、おにぎりだけで済ませる食事が多いと、たんぱく質のおかずが不足しやすくなります。
食事の回数が少ない Skipping meals
朝食を抜くなど1日1〜2食になると、残りの食事だけで必要な量をとるのは難しくなります。
ダイエット・食事制限 Diet
食事の量を減らしたり、肉や魚を控えたりすると、たんぱく質も一緒に減ります。エネルギーが足りないと、たんぱく質が燃料に回され、体の材料に使える分がさらに減ってしまいます。
食が細い・少食 Appetite
食べる量そのものが少ないと、たんぱく質も届きにくくなります。年齢とともに食が細くなった方も同じです。
必要な量が増えている Demand
成長期、妊娠・授乳期、運動量が多いとき、ストレスが続くときは、体が使う量が増えます。
ここがポイント
たんぱく質が足りないと、消化を担う酵素も不足しやすくなり、さらに消化しにくくなる悪循環に入ることがあります。胃もたれしやすく、肉や魚が重く感じる方は、一度にたくさんとろうとするより、消化しやすい形で少しずつ増やすところから始めてみてください。
1日にどれくらい必要?体重から考える目安
1日にとりたいたんぱく質の目安は、体重1kgあたり1.0〜1.5g程度といわれます。体重50kgの方なら、1日50〜75gです。3食に分けると、1食あたり約17〜25gになります。成長期、妊娠・授乳期、運動量が多い時期やストレスが続く時期は、さらに多く必要になります。
では、1食17〜25gは、どれくらいの食事でとれるのでしょうか。代表的な食品に含まれるたんぱく質の量をまとめました。左の数値は可食部100gあたり、右はふだん食べる量に換算した目安です(数値は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より)。
| 食品 | 100gあたり | 食べる量の目安 |
|---|---|---|
| マグロ赤身 | 26.4g | 100gで約26g |
| 豚ひれ肉 | 22.2g | 100gで約22g |
| 卵 | 12.2g | M2個(100g)で約12g |
| 木綿豆腐 | 7.0g | 1/2丁(150g)で約10.5g |
| 納豆 | 16.5g | 1パック(40g)で約7g |
たとえば、朝に卵2個と納豆1パックをとれば、約19g。昼と夜に、手のひらくらいの大きさの肉や魚(約100g)を主菜にすれば、それぞれ20g前後になります。1品で足りないときは、2品を組み合わせると目安に届きやすくなります。
まとめてではなく、毎日・毎食とる理由
体のたんぱく質は、一度つくられたらそのまま、というわけではありません。筋肉も肌も血液も、毎日少しずつ分解されては、新しくつくり直されています。分解されてできたアミノ酸の多くは再び材料として使われますが、一部は失われていくため、その分を毎日の食事から補い続ける必要があります。
しかも、たんぱく質は脂肪のように体にためておくことができません。週末にまとめて肉を食べても、平日に足りない分を埋めることはできないのです。分子栄養学で「毎日・毎食」のたんぱく質を大切にするのは、このつくり直しの材料を切らさないためです。
ライフステージによって、必要な量は変わる
同じ体重でも、時期によって体が使うたんぱく質の量は変わります。とくに次のような時期は、意識して多めにとりたいタイミングです。
成長期の子ども
体が大きくなる時期は、筋肉や骨、血液をどんどん新しくつくっています。体の材料として使う量が多い分、食が細い子や、朝食が菓子パンだけで終わりがちな子は、足りなくなりやすい時期です。
妊娠中・授乳中
お母さん自身の体に加えて、赤ちゃんの体をつくる材料も必要になります。つわりで食べられるものが限られる時期は、とくに不足しやすくなります。
年齢を重ねてから
年齢とともに食が細くなったり、あっさりしたものを好むようになったりして、たんぱく質のおかずが減りがちです。筋肉は使わないと落ちやすく、材料が足りないと、さらに落ちやすくなります。毎食のおかずを意識することが、動ける体を保つ土台です。
食事で取り入れるコツ
量を一度に増やそうとするより、毎食どこかに「たんぱく質のおかず」を1品置くことから始めると、続けやすくなります。
| 食材 | 取り入れやすい場面 |
|---|---|
| 卵 | ゆで卵や卵焼きで、朝食に1品 |
| 鮭・サバなどの魚 | 焼き魚や缶詰で、主菜に |
| 鶏むね肉・ささみ | 蒸し鶏や、スープの具に |
| 豚肉・牛肉 | 炒め物やしょうが焼きで、主菜に |
| 豆腐・納豆 | みそ汁の具や、もう1品に |
動物性と植物性、アミノ酸スコアで見る
たんぱく質には、肉・魚・卵などの「動物性」と、大豆製品などの「植物性」があります。たんぱく質の質を見る目安になるのが「アミノ酸スコア」です。体の中でつくれない9種類の必須アミノ酸が、どれだけそろっているかを示す数字で、100に近いほど質のよいたんぱく質とされています。
主な食品のアミノ酸スコアとプロテインスコアは、次のとおりです(オーソモレキュラー栄養医学研究所「アミノ酸」より)。
| 食品 | アミノ酸スコア | プロテインスコア |
|---|---|---|
| 卵 | 100 | 100 |
| 牛肉 | 100 | 80 |
| アジ | 100 | 89 |
| 大豆 | 100 | 56 |
プロテインスコアも、アミノ酸スコアと同じく、必須アミノ酸のそろい方を示す数字です。アミノ酸スコアではどれも100ですが、プロテインスコアで見ると、卵が100で、牛肉やアジ、大豆には差が出ます。どちらの指標でも満点の卵は、毎日の食事に取り入れたい食品です。
動物性は量をとりやすく、植物性は脂質が少なめで、ほかの栄養素も一緒にとれます。どちらか一方に偏らず、日によって組み合わせを変えると、飽きずに続けられます。
忙しい日は、間食や缶詰も使う
毎食おかずを手づくりするのは大変です。サバやツナ、鮭の水煮缶は、開けるだけで主菜やサラダに使えます。ゆで卵や冷ややっこ、塩味の焼き鳥、サラダチキンなども、もう1品足したいときに便利です。
3食でとりきれない分は、間食で補うこともできます。お菓子の代わりに、ゆで卵や枝豆、小さめのおにぎりに鮭やツナを合わせるなど、間食にもたんぱく質を入れれば、1日の目安に近づけます。
胃腸が弱い方は、少量を回数で
胃腸が弱く、肉や魚が重く感じる方は、1回の量を少なめにして回数を分ける、よく噛む、煮る・蒸すなどやわらかく調理する、といった工夫で取り入れやすくなります。
たんぱく質のサプリメントの選び方
毎食20g前後を食事だけで続けるのは、食が細い方や忙しい方には負担になることもあります。そんなとき、プロテインなどのサプリメントは心強い選択肢です。食事を土台にしながら、足りない分をサプリメントで補うこともできます。ただしたんぱく質は、「消化できる力」と「とる量」によって、体への届き方が変わります。
量と続け方は、消化の状態に合わせる
1日の中で何回かに分けてとると、体になじみやすくなります。必要な量は、体重や食事内容、消化の状態によって人それぞれです。
なお、プロテインパウダーには、乳を原料にしたものもあります。乳製品を控えている方は、原料も確認しておくと安心です。
健康相談NOZOMIでは、プロテインバーも取り扱っています。食が細い方でも無理なく取り入れられるので、朝食にもう1品足したいときや、食事の合間に使えます。
たんぱく質とあわせて意識したい栄養素
たんぱく質は、とったあと体の中で分解され、組み立て直されて使われます。その過程には、ほかの栄養素も関わっています。
| 栄養素 | たんぱく質との関係 |
|---|---|
| ビタミンB6 | アミノ酸をつくり変える働きを助け、神経伝達物質づくりにも関わる |
| 鉄 | たんぱく質と組み合わさって、酸素を運ぶヘモグロビンになる |
| 亜鉛 | 体の中でたんぱく質を組み立てる働きに関わる |
| ビタミンC | 肌や骨の枠組みになるコラーゲンをつくる働きを支える |
どの形で、どれくらいの量をとるかは、消化の状態や食事内容によって変わります。自己判断で量を増やすより、今の体の状態を確認したうえで決めることをおすすめします。
サプリメントに迷ったら
健康相談NOZOMIでは、品質と安全性に配慮したサプリメントを取り扱っています。「たんぱく質が足りていないかも」と感じたときは、今の食事や体調をお聞かせください。その方に合った種類や量、組み合わせまで、ご提案します。
よくある質問
たんぱく質が多い食品は何ですか?
肉、魚、卵、大豆製品(豆腐・納豆など)に多く含まれています。たとえば、マグロの赤身や豚ひれ肉なら100gで20g以上、卵なら2個で約12gのたんぱく質がとれます。
肉を食べていれば、たんぱく質は足りますか?
1日のうち1食だけ肉を食べても、体重50kgの方の目安である1日50〜75gには届きにくいことがあります。1食でまとめてとるより、3食それぞれにたんぱく質のおかずを置くほうが、量を確保しやすいでしょう。
たんぱく質は、とりすぎても大丈夫ですか?
どれくらいの量が合うかは、体重や食事内容、消化の状態によって変わります。気になる方は、今の状態を確認したうえで量を決めることをおすすめします。なお、腎臓の病気がある方は、医師の指示のもとで量を決めてください。
胃腸が弱くても、たんぱく質はとれますか?
一度に多くとろうとせず、1回の量を減らして回数を分ける、よく噛む、煮る・蒸すなどやわらかく調理する、といった工夫で取り入れやすくなります。食事でとりにくいときは、サプリメントで補うこともできます。
まとめ|毎食の「おかず」から、たんぱく質を見直す
この記事のポイント
- たんぱく質は、筋肉や肌、髪、内臓などの材料になり、酵素やホルモン、心の働きに関わる物質の材料にもなります。
- 体にためておくことができないため、毎日・毎食の食事から入れ続けることが大切です。
- 成長期、妊娠・授乳期、年齢を重ねてからは、とくに不足しやすい時期です。
- 1日の目安は体重1kgあたり1.0〜1.5g程度。体重50kgなら1日50〜75g、1食あたり約17〜25gです。
- 疲れやすい、筋力が落ちた、肌や髪・爪に元気がない、むくみやすいなどのサインが重なるときは、食事の中身を見直すきっかけになります。
- 食事を土台に、足りない分はサプリメントで補うこともできます。量や種類は、消化の状態に合わせて選びます。
量を一度に増やす必要はありません。まずは朝食に、卵や納豆などのたんぱく質のおかずを1品足すところから始めてみてください。
参考にした情報



